【メジャー雑記帖】マイナースタート決定の井川に、再び日は降り注ぐのか?

2010年 3月 16日 10:44 by 多々野親父

ヤンキースファンの皆さんでも、もしかしたら忘れていた名前かもしれませんが・・・。

招待選手扱いとしてメジャーのキャンプに参加していた井川が、3月13日にマイナーへの降格を言い渡されました。これで3A級スクラントンでのシーズンスタートが3年連続となるわけですが、このキャンプでの投球内容を見る限り、これも仕方のない結果だと言えるでしょう。井川は3月5日の対レイズ戦、そして7日の対ツインズ戦にそれぞれリリーフで登板しましたが、2回2/3を投げて5失点、防御率は実に16.88という惨状を喫しました。そして登板が予定されていた13日の対オリオールズ戦では名前がコールされず、試合後のスタッフミーティングでマイナー行きが決定されています。

Kei Igawa

Kei Igawa - Credit: Flickr user PShanks (licensed under Creative Commons))

井川は自身のブログでこの日の投球を振り返り、突然マウンドへ行けと命じられ、投球練習も満足にできなかったことが不満足な投球につながったと記しています。しかしマイナー行きについては「元々最後まで(メジャーに)残るとは思っていない。しっかりやって次のチャンスを待ちたい」と語り、ショックは受けていないことを明かしています。

2008年7月にメジャー枠から外れた井川は、スクラントンでこの年14勝6敗、防御率3.45、2009年には10勝8敗、防御率4.15という数字をマークしています。彼が挙げた通算29勝はスクラントンの球団記録でもあり、このクラスなら起用に耐えられることを数字は物語っていると言えるでしょう。しかし、それにも関わらずメジャーからお呼びがかからなかったこと、それが彼を取り巻く状況を如実に示してもいるわけです。

井川は松坂と同じ2006年のオフにポスティングシステムを申請し、ヤンキースが入札に参加して2600万ドルを支払い交渉権を獲得、5年間、年俸総額2000万ドルの契約を結んでいます。しかしメジャーでの登板は16試合に留まり、結果は2勝4敗、防御率6.66という悲惨なものとなってしまったんですね。左投手有利と言われたヤンキースタジアムを本拠地にし、強力打線が援護してくれるチームで投げる、そんな申し分ない環境を与えられた井川が期待に応えられなかった理由は、一体何だったのでしょうか?

井川が直面した最初の問題はコントロールにありました。2007年、投手コーチのロン・ギドリーは英語を話せない井川を気遣い、事あるごとに話しかけていました。その中で、特にギドリーが熱心に語った点は「低めへ投げろ」だったものの、井川はそれに反して「高めで勝負したい」とコメント、これが首脳陣の評価を一変させたと言われています。試合で痛打された球は高目であり結果も出せない、にも関わらず投球への指示を守れないとなれば、チームが井川を見限ることは必定だったということだったんですね。

阪神時代、井川は自己流で調整を続け結果を出していました。そのスタイルは時に「浮いている」と称され、2005年の胴上げ不参加事件(リーグ優勝決定の日となる試合が”上がり”だった井川は、チームを離れ球場から離れたジムでトレーニングをしていたというもの)も井川ならありえる、と阪神ファンにため息をつかせるものでした。こうした一匹狼的姿勢、もしくはうまく他者とコミュニケートできない性格が、井川の持つもう一つの問題ではないかと私は推測しています。何故ならそれは、チームプレイを求める側にとって最初に排除しなければならないものなのですから・・・。

井川は「本当の勝負はシーズンに入ってから」とマイナー行き決定後に話しています。今季のヤンキースは、サバチア、バーネット、ペティートの三本柱にブレーブスから6年ぶりの復帰となるバスケスが加わり、昨年二桁勝利投手が4人も揃う豪華な先発陣を形成しています。残る一席はチェンバレンとヒューズが争う展開の上、ロングリリーフ要員もパク・チャンホが加入したことでひとまず埋まっていることから、井川がこの中に滑り込める隙はない状況となっています。もちろん、先発陣にアクシデントが起きればチャンスになるとは言え、非常事態の中で井川の名を告げるには勇気が必要だと言えるでしょう。

昨年12月、ニューヨ-ク・タイムス紙は「ここ10年で最も期待外れだった選手」のランキングを発表し、その1位に井川の名前を挙げました。ブライアン・キャッシュマンGMも2008年シーズン終了後に「井川獲得は失敗だった」とコメントしています。このキャンプでも結果を出せなかった井川は、今後の方針として球種を増やしていくことを挙げていますが、それが彼に下されている評価を覆す材料になるのかについては、まだ誰にもわかりません。ただ、年俸400万ドルのマイナー選手をまだ2年も置いておかなければならないヤンキースとしては、少しでも早く他球団が買ってくれる選手になって欲しいという視線で自分を見ていることを井川は理解しなければならないはずです。毎日のように行われるトレードでさえ、今の井川はままならないわけですからね。

最初の渡米時、井川は抱負として「(趣味である)将棋をチームで広められたら」とコメントし、今キャンプに参加する前にも「グリーンカードを取得したい」と話しています。正直なところ、将棋のルールをチームメイトに語る以前にまずそのベンチにいられるのか、アメリカ永住権を取得するより先にまだ彼の地でプレイができるのか、考えなければならないことはもっと別なものではないのか?などと都度都度思いながら井川を見てきた私としては、今季こそ彼が転換点を迎えて欲しいと願っているのですが・・・、さて?

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